麻衣子の記録 連載第22回

6月15日(月)
5:50 朝の発作は比較的弱いものだった。泣き出すかと思ったら、声を立てて笑ったりした。いつも、この時間帯は表情が穏やかで、私が一番幸せになれるひとときであった。血圧125-85、体温37.1度。
7:18 おしっこが大量で、シーツまで濡らしてしまう。パジャマのズボンを病院から借りた。シーツ交換。その後、発作がかなり続いた。
8:00 看護学生がやってきた。看護師さんと看護学生が清拭をしてくれた。清拭は発作の少ない時間帯になるべく行いたいということだった。今日で入院1カ月になった。個室での生活も2週間が過ぎた。
9:05 口を開けて眠っている。
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18:15 再び、病室へ行く。発作がたびたびあった。発作の後、麻衣子は、なぜか笑っている。スイカの汁を使って、シリンジ(針のない注射器)で、薬を飲ませる。
19:04 口を半開きに、「あはは」と笑っている。楽しいことを思い出しているのだろうか。
20:00 おむつ交換、最近、尿の量が多いと看護師さんが言った。スイカ汁のせいだろうか。
21:00 麻衣子はまだ起きている。その後、目(瞼)をピクピクさせる不随意運動で苦しそうな時間が長く続いた。そして、びっくり反射もあり、なかなか眠れない。その後も、発作が続き、眠れないようだった。
 
6月16日(火)
5:28 リズミカルに目(瞼)と両腕をピクピクさせる不随意運動があった。
 朝、担当医のY先生が回診に来たので、昨夜は発作のために、良く眠れなかったようだと話したら、朝の薬(夜の2分の1量)を検討してくれるとのことだった。
9:14 寝不足のせいなのか、口を開け、いびきをかいて眠っている。
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18:00 私は、自宅で仮眠した後、病室に戻った。麻衣子は発作が多くてかわいそうだった。発作が起きた時、私は、顔を押さえ、手を強く握ってやった。
19:30 薬を飲ませる。
20:00 落ち着いて、いびきをかいて眠り始めた。
 昨日は、薬が効かなかったのに、なぜか今日は効き目があった。薬の力は絶大だなと感じると共に、昨日はなぜ効かなかったのかと不思議に思った。
20:45 担当医が来る。
21:20 おむつ交換。体位変換。麻衣子は熟睡している。
 
6月17日(水)
0:20 体位変換。3時間おきくらいに、体位変換がある。看護師さんが、枕を体の横に入れて、向きを変えてくれる。
1:50 幸せそうに眠っている。
2:55 赤ちゃんみたいに、しきりに声を出した。
3:03 起きているので、「ぼこうのうた」を歌ってやった。「今日はお義母さんが来るよ」と声をかけた。本当に赤ちゃんみたいだ。
3:06 「あーあはは、あーあはは」と声を出している。
5:00 体が動く。弱い発作。
5:50 検温36.9度 血圧は良。おだやかだ。
 病気にかかってしまったのは、確かに不幸だ。麻衣子の言う運命かもしれない。それはどうにもならない。家族がすべきことは、今の麻衣子を穏やかに過ごさせること、それだけだ。
6:30 声を出して泣いている。何が悲しいのだろう。スイカの汁を注射器で飲ませた。
7:00 ピクピクと不随意運動が始まった。
7:20 おむつ交換。尿の量が多かった。
7:30 両腕を屈曲交差させ、胸の上に置いて、口を開けて眠っている。
7:45 担当医が回診に来た。朝の服薬の件をお願いした。麻衣子は穏やかに眠っていた。
8:20 看護学生がやって来た。この学生さんは、真面目で、とても優しい人だった。私は、義母に、「美帆がこの看護学生のような女性だったらいいんだけどね」と言った。当然だが、義母は良い顔をしなかった。その看護学生に麻衣子の病気についていろいろと話した。それは、麻衣子が、「私はもうあきらめている」「この病気から、もし、生還できたら体験記を書きたい」と言っていたことなどについてだ。
8:35 大きく体が動く。頬をなでてやると笑っている。また、大きく体が動いた。
9:03 ぼーっとしている。
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 夕方、病院に戻る。
17:50 薬を飲ませる。その後、大きな発作があり、大きな声を出した。
18:20 薬が効いたのか、いびきをかいて眠り出す。時々、目を開けて、ぼーっとした表情をするが、よく眠っている。
21:20 目を開けた。目覚めているのかな? 口も動かしている。その後はよく眠った。夜間は、3時間おきに、おむつ点検と体位変換がある。そのたび、私も起きる。