麻衣子の記録 連載第32回

7月3日(金)
1:40 目を覚まして、声を出している。喉が渇いたのかな? おむつ交換、体位変換
2:32 少し声を出している。左腕が動いている。  
2:58 口を開けている。穏やかだ。  
7:00 眠っている。
8:00 顕著な発作が始まった。
8:15 担当医の回診。担当医に転院先の病院への搬送の方法について聞く。
8:45 朝の薬を飲ませる。ときに、びっくり反射が起きるが、概ね穏やかに過ごす。薬のせいか、ぼんやりしている。
9:01 自分で空気を吸い込む喉の音がおかしいのか、笑う。
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お久しぶりです。発症してしまえば、現代医学では治療法なし、致死率100%、平均余命約1年という病気があります。そんな恐ろしい病気が我が家へやってくるとは、考えもしませんでした。7日には、大学病院から、最期まで診てくれる長期療養型病院へ転院します。まだ、病気が原因の発作に苦しめられておりますが、最期の日まで、穏やかに過ごせるように、家族で頑張っていきたいと思っています。
 
14:15 大きな発作。全身が動いて、麻衣子は恐怖の表情を見せた。
14:20 体温37.6度、血圧140-97。麻衣子を転院先まで運ぶ介護タクシーのリストをもらう。
 隣の個室に入院している患者の付き添いのおじいさんに声をかけられた。夫人である病人は寝たきりで体は動かない難病のようだが、意識はしっかりしているらしい。生きているうちに、会いたい人がいるかと聞いて、会わせたそうだ。転院先として、ある病院を紹介された。家族で、その病院を見学したのだが、家族も本人もそこに移るのを拒否したらしい。あんなところではかわいそうだ、いやだと。でも、病院から紹介してもらった転院先を断れば、もう、家庭で看るしか選択肢はない。まもなく、退院して、週に一度の訪問看護などを受けながらの自宅療養になるらしかった。
14:45 やりにくかったらしく、看護師さんが点滴を差し替えるのに時間がかかった。
16:45 首を後ろにそらして、体はピクピク。
17:30 担当医ほか数人が回診に来る。ちょうど発作の時だった。朝の薬を半分でなく、1錠にするかどうか検討するという話だった。