麻衣子の記録 連載第59回

8月20日(木)
9:40 麻衣子の病室へ。乳酸菌飲料を飲ませ、喉のネバネバをとる。固まったものが、かなりあった。
9:55 薬を飲ませる。乳酸菌飲料を飲ませる。麻衣子の両手は胸の所にあり、右手を少しだけ動かしている。表情は、まだまだ元気な気もするし、弱っているような気もする。太腿やふくらはぎが痩せ細ってしまったのを見るのは悲しい。それらに比べると、顔はそれほどでもないような気がする。
10:25 職場体験の中学生2名と看護師さんがベッド清掃に来た。ちょっと体が動いているようだ。発作かな? 外はすごい雨が降っている。 
10:40 検温36.4度
11:00 看護師さんによる口腔ケア。
11:15 薬が効いているのか、寝息を立てて眠っている。
11:50 「ハー」と声を出した。喉のネバネバをとる。見えない目は宙を見ている。また、目を閉じた。
12:05 表情に元気がない。目がうつろ。薬のせいかな? ときどき、「ヒュー」という喉の声。 
12:40 「オワオワ」。左手の指が動いている。頬もピクピク。左足も動く。発作だろう。目尻にしわを寄せている。
13:10 検温、血圧測定。熱がないので、今日のお風呂はOK。
13:15 両足の収縮発作。
13:40 お風呂に行く。
14:35 お風呂から戻ってきたので、喉をきれいにしてやる。お風呂に入ったので、喉が渇いただろうと思い、乳酸菌飲料を飲ませた。
15:50 右足収縮発作。歯ぎしりをして、音を立てている。
15:58 両手と右足が少し動く。
16:05 右足が収縮しているが、表情は落ち着いている。
16:50 口元が動いた。発作だろう。
17:25 両足収縮。上半身も動く。目もピクピク。表情も不安そうだ。
17:45 喉のネバネバをとって、薬と乳酸菌飲料を飲ませる。
18:00 とても落ち着いた表情をしている。竹内まりやの音楽に聞き耳を立てているのだろうか、足先を動かしている。こんな麻衣子のそばにいるときは、幸せを感じる。 
18:25 薬が効いてきた表情になった。
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 美帆の態度に怒りを覚えるときがあるが、私の心の変動に関係しているのかもしれない。私は、看護に疲れているのだろうか。
 麻衣子がどうしてこんな病気にという考えが時々出てくる。これから、自分はどう生きていったらいいのかという不安も。
 どうしたら、現実を受け入れられるのか?
 麻衣子が遠いところに行ってしまうという現実を!
 なぜ、こんなことにという思いが繰り返し、わきあがってくるのを!
 信じがたいという思いを!
 これは本当のことなのか?
 麻衣子がこんな目にあうとは、どうしてなのだ!