麻衣子の記録 連載第88回

10月16日(金)
 朝、歯科医院に寄ってから病院へ。
11:00 麻衣子の病室へ。37度台の熱のためか、落ち着いている。頭の下には冷やし枕。
11:08 オムロン37.2度 
15:10 口を開けてくれたので、口の中をきれいにすることができた。
16:39 オムロン37.3度
17:12 検温37.2度
17:15 オムロン37.1度
17:30 薬を飲ませる。
 ・・・・・・・・・・
 熱が低めで、とても穏やかな一日であった。麻衣子は少し声を出してはいた。
 どういうわけか、麻衣子のJ銀行のキャッシュカードが使えなくなった。理由はわからない。いつものパスワードを受け付けなくなった。すでに、残高はそれほどではないのだが、毎月の麻衣子の給与はこの口座に振り込まれている。
 これで、私の全収入は、わずかな年金だけになってしまうが、貯金があるから、困りはしない。でも、これから、アパートの家賃と生活費、麻衣子の入院費用とで、毎月、大きな赤字が続くだろう。
 
10月17日(土)
 この日は、義母と麻美に麻衣子を頼んで、私は、すぐにアパートに戻り、団地とアパートを往復して、残りの引っ越し荷物を運んだ。
 
10月18日(日)
9:35 麻衣子の病室へ。オムロン38.5度 
9:40 オムロン38.5度 
10:48 オムロン38.8度 
11:00 検温38.1度。オムロン38.8度
11:42 オムロン38.6度 
13:17 オムロン39.1度 
13:56 オムロン38.5度 
14:18 オムロン39.2度 
14:30 熱が高いので、腋の下にも冷やし枕。
16:57 オムロン38.5度 
17:10 検温で、まだ体温は38度、小さな声だが、麻衣子は声を出している。
17:30 口の中のネバネバをとる。
 
 ・・・・・・・・・・・
 このところ、私自身が体調を崩した。引っ越し作業で疲労がたまったためだろうか、ずっと、下痢が続いていた。でも、今日は体調がもとどおりに回復した。これからは、食べ物に気をつけて生活しようと思う。
 孤独な看護生活である。義母や娘たちがみんな、私が自分のわがままで、麻衣子の尊厳を冒し、延命をはかって、麻衣子を苦しめていると言いたげなのである。ずっと、つきっきりで看護に当たっているのは誰だ。麻衣子の看護方針は私が決める。麻衣子が天国に旅立った後は、そんな家族と顔を合わせることもないだろう。顔など合わせたくもない。自分一人で生きていくのだ。