麻衣子の記録 連載第91回

10月23日(金)
9:35 麻衣子の病室へ。
9:45 オムロン38.9度  
9:49 オムロン38.9度
12:06 オムロン39.1度 
12:53 オムロン38.8度 
13:00 検温38.0度。麻衣子はうなっている。
13:42 オムロン39.0度  
14:34 オムロン38.6度。麻衣子の唇が赤みをおびて、生き生きとしてきた。
15:30 落ち着いてきた。
15:36 オムロン38.6度 
16:50 検温38.4度
16:55 薬を飲ませる。
17:26 オムロン38.3度 
 
 私は、今日、麻衣子の学校へ住所変更を届け出た。履歴事項追加変更届(願)、公立学校共済組合員住所変更届、財形貯蓄の住所変更届などの書類を事務担当者に返送した。
 
前略 大変お世話になっております。
このような時期に、転居でご迷惑をおかけします。住居手当は、停止でお願いします。新しい住居は、私(夫)が契約者で、世帯主になります。財産形成貯蓄の用紙に捺印したのは、新しい印鑑です。契約時の印鑑は紛失しました。親睦会費はそのままで結構です。いろいろと、お手数かけますがよろしくお願いします。病室の家内につきっきりで、そちらに出向くことができません。お許しください。なお、書類に不備があったらお知らせください。
 
 夫婦は同居の義務があるのだから、私が引っ越す場合は麻衣子と一緒なのは当然のことだ。私は、アパートの玄関の表札カードに、住所と私と麻衣子の名前を記入した。麻衣子がこのアパートに帰って来ることはあり得ないだろう。でも、入院している麻衣子が、もし、帰ってくるのなら、それは、ここであって、決して、今、美帆の住んでいる団地ではない。
 やっと、この日、私は美帆から麻衣子を完全に取り返したのだった。
 
10月24日(土)
9:50 麻衣子の病室へ。
9:54 オムロン37.6度
10:30 検温37.0度、血圧正常。
10:40 薬を飲ませる。おむつ交換。お通じがないので座薬。熱が下がって落ち着いている。
12:22 オムロン36.9度
13:32 オムロン36.7度
14:35 検温37.4度。「うーん」と声を出している。また、体温が上がり始めるのか?
14:50 オムロン37.3度  
16:50 オムロン37.8度 
17:35 薬を飲ませる。
 ・・・・・・・・・
 私の看護生活のホームベースが、一人暮らしのアパートに移った。美帆を気にしないで、麻衣子の看護に没頭できるようになった。私の心は自由になり、グンと安定した。これは、本当に良いことだ。