麻衣子の記録 連載第94回

10月30日(金)
9:35 麻衣子の病室へ。顔を拭いて、薬を飲ませる。
9:52 オムロン38.2度
10:30 検温。体を拭いてもらう。
11:32 オムロン37.6度
13:30 オムロン37.6度
14:25 オムロン37.9度
14:55 テルモ37.11度。麻衣子は落ち着いている。穏やかだ。
16:20 オムロン37.1度。とても落ち着いている。熱は完全に下がった。
16:50 少し、口の中をきれいにした。
17:10 検温36.9度
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 郵便物転送手続きをした。住所変更の手続き、衣類の整理、麻衣子記念室の整備を進めなければと思う。
 数日前、弟から、叔母の死去の知らせを受けた。お悔やみは依頼した。不意の冠婚葬祭に備えて、ジャケットや礼服をクリーニングに出しておかなければ。クリーニングはみんな、麻衣子に頼っていたからな。
 買い物リスト・・・ヘアカッター、プラスティックの入れ物、ポリ袋、ゴミ箱、冷凍食品いろいろ、海苔、卵。
 免許証のコピーを取っておくこと。
 
10月31日(土)
9:35 麻衣子の病室へ。
9:45 オムロン38.1度 
10:00 検温38.0度 
12:07 オムロン38.6度。麻衣子はうなっている。
12:55 検温37.7度
13:45 オムロン38.5度
14:35 テルモ37.37度
15:25 テルモ37.29度
15:55 体位変換
16:00 テルモ37.22度
16:50 テルモ36.98度
17:10 検温37.2度
17:30 薬を飲ませる。
17:55 テルモ37.04度
 
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 病棟には、様々なスタッフがいる。男の看護師もいるし、ベテランも若い女性の看護師もいる。親切な掃除のおばさんも病室に出入りし、麻衣子に優しくしてくれる。また、看護師というより、介護職員のような人もいる。
 看護師で、ちょっと豪快な感じの女性がいた。私たちは、気さくにその看護師さんから、いろいろなことが聞けた。あるとき、彼女が、麻衣子の腕をつねった。麻衣子はしかめ面をした。看護師は、「まだ痛いという感覚が残っているのね」と言った。また、あるとき、こう言った。
「さあ、呼吸が先か、心臓が先か、でも、同時に止まることが多いのよね」