麻衣子の記録 連載第95回

11月1日(日)
13:00 麻衣子の病室へ。美帆は団地に帰る。
13:59 落ち着いている。オムロン37.5度 
15:05 検温37.3度
17:05 検温36.6度。今までにないような平温になった。
17:45 薬を飲ませる。綿棒で口の中をきれいにする。
17:50 オムロン36.7度 
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 麻衣子の喉をきれいにしていたら、貝の干物のおつまみのような固形物が出てきた。
 保険の住所変更を申請した。本人ができないので、代理人である私が代わって行うことができる。私が受取人になっている保険金は、私の口座にしか入金されないだろうが、その手続きについても、「母さんのことは全部自分がやる」と言っている美帆に任せず、自分ですべてやるようにした。
 11月になった。こんなに長く病院へ通うとは考えもしなかった。でも、麻衣子が頑張って生き続けていてくれるのはうれしい。病院通いの生活の中で、いろいろなことを考えた。次なる生活を見据えて、引っ越しもした。ひとりで生きて行こうという覚悟もできた。
 昨日の美帆の電話は意外だった。今日は朝から病院に来てくれた。午後1時に交替した。お陰で、オイル交換やいろいろな買い物をすることができた。
 麻衣子は、これからどんな最期を迎えるのだろう。でも、もう怖くない気がした。できるだけ穏やかに、それだけが願いだ。
 
11月2日(月)
 朝、N生命(保険会社)へ提出する住所変更書類に必要事項を記入し、ポストに投函した。
9:35 麻衣子の病室へ。氷枕をしていたので、熱があるのかと思った。額も体も熱いような気がした。でも、実際に体温を測ってみると36度台であった。明け方には38度あったらしく、それで氷枕をしていたようだ。熱があるときには、「うーん、うーん」とうなり声を出すので、その時の方が熱のない時より、むしろ元気に思えてしまう。
9:51 オムロン36.8度 
10:20 検温37.2度。薬を飲ませる。落ち着いている。
13:00 オムロン36.9度 
13:20 検温36.7度。お通じがない。
15:15 オムロン36.9度 
16:50 検温37.1度。薬と水を飲ませる。
17:55 オムロン37.1度 
17:20 薬が効いてくると眠った。
 
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 今日は穏やかな一日だった。この病気は今後、どのような経過をたどるのだろうか。きっと、急な容態悪化ということなのだろう。熱がない時は、うとうとしている時間が長い。麻衣子にとっては、眠っているときが一番幸せな時なのだろうと思う。私も引っ越しして、ひと月近くなるが、新しいアパートの生活に慣れてきた。あとは、TVとTV台があれば、一応、家財道具はそろう。明日にも注文しよう。
 買い物リスト・・・粘着テープ、スティックのり、もっと強力な掃除機、ゴミ箱、ペール缶、TVとTV台。分波器。ケーブル。
 生命保険やクレジットカードなど、住所変更がたくさん必要だな。
 
私から麻美へ
今日は、これまで、高熱に苦しめられていたのが、嘘のように、穏やかでした。明け方には38度の熱があったようですが、その後は下がりました。明日も、今日と同じようだといいなあ。明日は、美帆も病院に来てくれると言うことです。お義母さんも4日には来る予定になっています。