奥の細道をたどる(その4)

芭蕉は、元禄2年3月27日(現在の暦では5月16日)に千住で船からあがり、みちのくへ向けて出発する。
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弥生も末の七日、あけぼのの空朧々として、月は有明にて光をさまれるものから、富士の峯幽にみえて、上野谷中の花の梢又いつかはと心細し。睦まじきかぎりは宵よりつどひて、舟にのりて送る。千住といふ所にて舟をあがれば、前途三千里のおもひ胸にふさがりて、幻の巷に離別の涙をそゝぐ。
   「行く春や鳥啼き魚の目は泪」
これを矢立の初めとして、行く道なほ進まず。人々は途中に立ち並びて、後影の見ゆるまではと見送るなるべし。
※「矢立」とは、墨壺に筆入れの筒のついた携帯用筆記用具のこと。ここでは、俳諧創造の旅の象徴。