麻衣子の記録 連載第54回

8月10日(月)
9:45 麻衣子の病室へ。乳酸菌飲料を飲ませる。
10:00 薬を飲ませる。お通じがないので、テレミンソフト座薬を使用したと、看護師さんから聞いた。
10:28 乳酸菌飲料を飲ませる。
10:30 看護師さんによる口腔ケア。顔もきれいにしてもらった。
10:40 体が少し動いている。
10:52 薬が効いているのか穏やかである。 
11:06 目がピクピクしている。弱い発作。
11:25 乳酸菌飲料を飲ませる。
11:35 いびきのような喉の音、「オワオワ」。右手も少し動いている。
11:45 薬が効いたのか眠っている。
12:15 よく眠っている。
12:25 目を覚ました。穏やかである。
12:30 手が少し動く。
12:45 よく眠っている。眠っているときが、いちばん幸せかもしれない。
12:50 乳酸菌飲料を飲ませる。(合計10cc)
13:03 乳酸菌飲料を飲ませる。
13:30 口の様子がおかしいので、喉のネバネバをとって、柑橘系飲料を飲ませる。37.3度の微熱があるので、冷やし枕にしてもらう。
13:40 発作のようだ。右手が動く、表情と唇でそれとわかる。でもそれほどひどくはない。 
13:45 右足の収縮発作。表情は険しい。
14:05 両足の収縮発作。比較的長く続く。両手で足を押さえて、やっと落ち着く。やはり、押さえて固定してやると、安心した表情になる。 
14:25 両足の収縮発作。長い。
14:35 また弱い収縮発作。
14:45 喉を鳴らしているので、柑橘系飲料を飲ませる。
15:05 右足の収縮発作。喉を鳴らしているので、柑橘系飲料(3.5cc)を飲ませる。
15:20 おむつ交換。
17:30 右足収縮発作が、何回か起こる。
18:00 薬を飲ませる。
18:20 目に発作が現れている。
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 だんだん麻衣子が天国へ行ってしまったあとのことを考えなければと思うようになってきた。今朝の美帆の態度は、昨日、おとといと違っていたように思った。新しいマンションで美帆と一緒の生活を試してみるのも良いかもしれない。どうしてもうまくいかない時には、止めればいいさ。
 麻衣子は、もう、家に戻ってはこないのだと言うことが、だんだん受け止められるようになってきたような気がした。あきらめがついてきたと言うのか、仕方がないというのか。
 もし、麻衣子が話すことができたら、「よっちゃん、これは運命よ、運命、早くあきらめなさい」とでも言いそうだ。でも、麻衣子が恐ろしい難病に冒されるなんてなぜなんだ、と言う私の思いは強く、現実を受け入れるのは、そう簡単なことではない。
 
8月11日(火)
9:55 麻衣子の病室へ。ちょっと、右足収縮。
10:20 薬を飲ませる。柑橘系飲料も少量飲ませる。検温で熱はなし、元気だ。
10:30 看護師さんによる口腔ケア。顔もきれいにしてもらった。
10:50 静かな「オワオワ」発作か? すぐに落ち着く。
11:05 穏やかである。
11:25 薬が効いているのか、よく眠っている。
11:35 柑橘系飲料と乳酸菌飲料を飲ませる。落ち着いている。
12:00 義母が来る。麻衣子は眠っている。
13:00 検温37.5度。体温が上がったので、氷枕を用意してくれるとのこと。
13:10 左腕、右足の収縮発作。
13:20 氷枕になる。
13:40 喉のネバネバをとって、乳酸菌飲料を飲ませる。
14:27 右足の収縮発作。
16:30 義母が帰る。
16:55 薬が効いて、穏やかな表情になった。
17:15 すっかり落ち着いている。
17:57 右足は動いているのだが、とても弱い。薬で抑えられているからだろうか。
18:32 ずっと落ち着いている。
18:40 眠った。夜中に目覚めるだろうけど。