麻衣子の記録 写真編14

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 麻衣子は料理が好きだった。暇さえあれば、台所に立って何かしていた。最初のマンションから団地に引っ越すとき、麻衣子は、深夜まで、お世話になったマンションの台所を磨いていた。他の部分の掃除に比べれば、明らかに、台所の掃除に圧倒的な力が込められていた。それだけ、台所への愛着が強かったのだろう。
 その麻衣子の人生がいきなり中断され、大好きな台所に立つことが、もうあり得ないのだということは、私には受け入れがたいことだった。