麻衣子の記録 連載第48回

7月30日(木)
9:50 麻衣子の病室へ。乳酸菌飲料を飲ませる。口の中をきれいに、顔をきれいにしてあげる。
10:20 薬と乳酸菌飲料を飲ませる。
10:40 右手と左足が、動く発作。口を開けて、目はうつろに、「うーん」という声も出している。
10:50 口をゆがめていたので、口の中と喉をきれいにしてやる。
11:10 口を開けて、穏やかに眠っている。薬が効いてきたのかな。
11:35 目を開けたので、乳酸菌飲料を飲ませる。
12:10 CDの音楽に合わせて、手を動かしているように見えるし、ピクピクしているようにも見える。
12:20 薬が効いているせいなのかもしれないが、なんとも弱々しいので、とても悲しい。
12:40 表情がおかしいので、喉をきれいにして、乳酸菌飲料を飲ませる。
12:50 左足が収縮する発作があった。左足を押さえてやると、しばらくして治まる。
13:02 怒ったような表情だったので、喉をきれいにしてやる。
13:10 検温37.4度。お風呂に入れてもらえるか心配だ。
13:40 お風呂に行った。
14:15 お風呂から戻ってきて、気持ちよさそうな表情をしている。義母が買ってきてくれたネグリジェを着せてもらった。小さな花がたくさんプリントされたカラフルなネグリジェだった。麻衣子にとても似合っていると思った。若い看護師さんもネグリジェの柄がとっても可愛いいねと言った。
14:40 点滴、心電図機器を元に戻す。
 麻衣子は、頑張って生きている。私が、この現実を受け入れることができるようになるまで、頑張って生き続けてくれるのだろうか。あと、10日もすれば、発症後4ヶ月になり、10月10日には半年になる。その頃までに危機はやってくるかもしれないが、今は穏やかだ。窓の外は、暑い夏。
14:45 風呂上がりで、喉が渇いただろうと思い、冷たい乳酸菌飲料を飲ませた。喉のネバネバもきれいにしてあげた。
15:05 発作かと思ったら、すぐに終わった。歯をきれいにしてあげる。弱いが、「あーあー」と声を出している。
15:15 気持ちよさそうな表情。病室には、竹内まりやの歌が流れている。
15:20 発作だ。目と手に現れた。でも、頭を押さえてあげると、すぐに治まった。
15:37 喉をきれいにした。
15:38 頭が動く。発作なのか、それとも、自分で動かしているのか。手は、音楽に合わせて、自分で動かしているような気がする。でも、左足も動いているから、やっぱり発作なのかもしれない。やがて、表情は良くなった。尿が出ていなかったので、調べたら、膀胱にはたくさん溜まっていたらしい。それで、これからは、常時、管で採尿することになり、その処置がなされた。
16:40 ギター型発作が起きている。首を動かし、怒りと恐怖の表情を見せた。ちょっと怖い。ずっと、穏やかな表情でいてくれるといいのだが、麻衣子の悲しい姿は、私が引き受けなければいけないのだろうとは思った。
16:50 喉をきれいにして、乳酸菌飲料を少量飲ませる。
17:00 「ぼこうのうた」、「二人は80歳」、「あめふりくまのこ」などの歌を聴かせる。麻衣子の腕がさらに細くなったと感じた。
17:45 喉をきれいにして、薬と乳酸菌飲料を飲ませる。
18:15 目を大きく開けて、右手を動かしている。CDのフォークソングを聴いているのだろうと思えた。
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 今は、私の人生で、最大の試練の時なのだろうと思う。とても苦しく、悲しい時だ。