麻衣子の記録 連載第49回

7月31日(金)
9:30 麻衣子の病室へ。乳酸菌飲料を飲ませる。口の中をきれいに、顔をきれいに。
10:05 発作がある。首を曲げ、声を出している。
10:15 検温、血圧測定。指にむくみが見られる。
10:20 目を上に向けて、口を開け、右手が動く発作が起きている。発作が治まってから、薬と乳酸菌飲料を飲ませる。
10:40 落ち着いて、音楽を聴いているようだ。
10:50 看護師さんによる口腔ケア。
11:00 痴呆発作のような目と口。私は不安で悲しい。麻衣子の顔が細長くなったような気がする。
11:20 穏やかな表情で眠っている。こういうときは私はうれしい。
11:22 そう思っていたら、目と腕に現れる発作。声は「うー」。
11:31 穏やかな顔で眠っている。安心だ。
11:38 薬が効いているのか、穏やかに眠っている。
12:15 発作がある。目、首に現れる。厚い舌を口から出している。義母が来る。
12:37 右肩が動いている。
13:20 発作がある。泣き出しそうだったので、乳酸菌飲料を飲ませる。
13:50 音楽を聴きながら、右手を動かしているような気がした。
14:10 収縮発作。右足が強い。目をきょろきょろさせている。10分ぐらいで落ち着く。
14:32 口を尖らせての痴呆発作。すぐに治まる。
15:20 頭部に強い発作。苦しそうだ。点滴も閉塞してしまう。
15:40 頭部に現れる発作。
15:55 検温37.0度
16:00 左足の収縮発作。「うー」と声を出す。左足を押さえてやると、しばらくして治まる。
16:15 薬を飲ませようとしたら、痴呆発作。時間をかけて、ゆっくり、薬を飲ませた。
16:32 口が開く。発作か? 左手が動くが、自分で動かしているようにも見える。
16:40 口の中をきれいにしてやる。
16:55 検温37.5度
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 義母が買ってくれた可愛らしいネグリジェは、おしっこで汚れてしまった。
 美帆が来たので、付き添いを交替する。病棟から出るとき、廊下で、亡くなった人を乗せたらしいストレッチャーを目撃して悲しくなる。麻衣子もいつか、そうして、病院を後にするのかと。
 
8月1日(土)
9:40 麻衣子の病室へ。乳酸菌飲料を飲ませる。顔をきれいに、歯をきれいにする。検温37.7度
10:00 薬を飲ませる。乳酸菌飲料を飲ませる。
10:19 「ぼこうのうた」を聴かせているが、右手が動いている。
10:35 看護師さんによる口腔ケア。
10:45 痴呆発作のようなのが起きている。弱々しく。
11:25 穏やかに眠っている。寝息が聞こえる。
12:10 目を開けている。穏やかな顔だ。これまで、目立った発作は起きていない。
12:40 口の中をきれいにして、乳酸菌飲料を飲ませる。
12:50 乳酸菌飲料を飲ませたが、口をホの字に繰り返し尖らせていた。発作が起きているようにも見えた。
12:55 弱いが、頭の中で発作が起こっているようだ。
13:10 喉をきれいにして、乳酸菌飲料を少量飲ませる。
13:15 頭の中で発作が起きているようだが、弱い。すぐに終わる。
13:22 収縮発作が始まりそうな表情(不安な様子で目を左右に動かす)を見せた。実際、右足が少し動き始めたが、すぐに終わり、表情は戻った。
14:05 頬と唇が動いている。発作だと思うが、弱い。音楽に合わせて、手足を動かしているように見える。
14:35 喉をきれいにしてやる。
14:50 弱いが、頬が動く発作がある。
15:30 口がホの字の形、そして目にも現れる発作があるが、弱い。
15:35 目に発作。両腕も動いている。
15:47 口をホの字に、目を見開いて天井を見つめている。発作かな?
16:40 全身の収縮発作。
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 家(団地)にいるときの方が、病院で麻衣子と一緒にいるときよりも、「なぜ、こんな病気に」と、悲しくなる。麻衣子のそばにいるときの方が、まだいい。