麻衣子の記録 連載第66回

9月1日(火)
9:55 麻衣子の病室へ。薬と乳酸菌飲料を飲ませる。
17:20 大学病院のT先生が来る。
17:45 足の収縮発作。
18:00 薬を飲ませる。
18:40 両足収縮発作。
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 毎週火曜日には義母が来てくれる。午前中に来た義母と、美帆のことで、話をする。長々と、麻衣子の枕元で、私の思いを聞いてもらった。私は、少しすっきりした。義母は、笑いながら帰った。
 
9月2日(水)
9:40 麻衣子の病室へ。喉のネバネバをとって、乳酸菌飲料を飲ませる。薬を飲ませる。顔をきれいにする。
9:55 麻衣子は目を閉じている。
10:00 体が揺れる発作。
10:05 看護師さんによる口腔ケア。
10:30 笑ったような、頬をピクピクさせる不随意運動。
10:45 「オワオワ」発作。
13:00 検温、熱はない。今日のお風呂はOK。
13:50 お風呂に行った。
14:30 お風呂から帰ってきたので、喉のネバネバをとって、水を飲ませる。
17:40 両足収縮発作。
17:45 薬を飲ませる。
 
9月3日(木)
9:35 麻衣子の病室へ。麻衣子は目を閉じて、口を開けていた。喉のネバネバをとって、水を飲ませた。顔をきれいにする。いい表情になった。
10:00 薬を飲ませる。  
10:45 喉を詰まらせたようだ。喉を刺激してやる。喉のネバネバをとって、乳酸菌飲料を飲ませる。
10:51 体重測定32kg。
11:10 検温37.6度
11:45 眠っている。目のあたりで発作か。喉から「あっ、あっ」という音も出している。
12:00 口をモグモグしていたので、乳酸菌飲料を飲ませる。 
13:00 担当者によるおむつ交換、体位変換
13:05 喉のネバネバをとる。
13:35 両足収縮発作。
13:40 喉のネバネバをとる。
13:45 だらしなく口を開けていたので、また、喉のネバネバをとってあげた。
13:55 上半身と下唇が動く発作。
14:10 喉のネバネバをとる。
14:38 喉のネバネバをとる。
16:30 喉のネバネバをとって、乳酸菌飲料を飲ませる。
17:15 薬を飲ませる。乳酸菌飲料を飲ませる。
17:45 落ち着いた。薬のせいかな?
18:03 両足の収縮。体も揺れている。
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 若い看護師さんが、「今、どんな世界にいるんでしょうね」と言った。それは、いつも私が考えていることでもあった。私は、こう答えた。「それは、本人にしかわからないし、もし、奇跡が起こり、病気が治ったとしても、どんな世界であったかは覚えていないでしょう。記憶をとどめるべき脳が壊れていたんですからね。脳梗塞から回復した人が、記憶が抜け落ちているのと一緒ですよ」